高い城の男

フィリップ・K・ディック「高い城の男」。

ちょうどディックの「マイノリティーリポート」を映画で観たところだった。SF映画にありがちな銃撃戦わっしょいの逃避行モノでしょう、と相変わらずの上から目線な気分で鑑賞したのだけど、これがまあ予想に(嬉しいことに)反しておもしろい。そもそも、「ブレードランナー(=アンドロイドは電気羊の夢を見るか?)」とか「マイノリティーリポート」とか「トータル・リコール(=追憶売ります)」とか彼の作品は映画向きなんでしょうかね。てか、調べたらほかにも映画化されててぜんぶ一気に観ようかなーとか思ったり。ちなみに「マイノリティーリポート」はおもしろかったです。黒幕的なオチは好き。

それはさておき、「高い城の男」である。結論から言えば、僕の脳みそレベルではこの小説は難解すぎたかも、ということ。少なくとも、オチがよくわからん。設定は大好物で、『第二次大戦が枢軸国側の勝利に終わり、いまや日本とドイツの二大国家が世界を支配しているのだ--』というもの。いいっすねえ。こういうもしもシリーズ。世界的常識で、かつ枢軸国=悪とでも言われるようなこの現在の世界観で、それをひっくり返した小説なんだからさぞかしスケールの大きなワクワクするような物語に違いないと思っていたのは読了前のぼく。「枢軸国が勝った世界でそれとは逆に連合国が勝った世界の小説が出回っている」という話の進み方は大いに楽しかった。けど、そこまでなんだよなあ。「ドイツ国家の話」「ジュリアナの話」「エドフランク宝飾工房の話」とあって、最初とか中盤でキャラクター同士がちょこちょこと関わっているのはわかるんだけど、終盤に向けてこれらの物語が同じ方向を向いているように思えなくて(そういう物語だというなら納得ですが)。深いところまで読みきれなかったのだと(本気で)思うんだけど、「で?」という感想しかないなー。うーん。章ごとの小さな物語でいえば、おもしろい話もあったんだけど、全体でみるとちょっとわかんない。「もういっかい読むかー」という気にもなれんのでどうしようもなく…