ヒーロー見参!!

PS:意識より愛をこめて

今年よかった本ベスト3で年納め【2016年】やっと書けたVer.

 

“振り返り”

というほどのもんじゃないけど、今年は「これはいいぞ!最高だ!」とテンション上がるような本と出会うことが多かったので、“今年よかった本ベスト3”です。

あまり本を読まなかった1年だったけど、それでも僕好みな本を発見する機会が多かった印象。「あぁ…、よかった。素敵だ、最高だ。ベスト3とかで記事を書いてコレは絶対に紹介したいな、人生ベスト10とかでも堂々とランクインするんじゃねえかってぐらい素敵な本だもんな」という感じの本が今年は多かった。つまり、いい1年だった。

 

では、以下より。

それぞれいいところがあるんで、順位とかはないです。

 

 

『ジャリおじさん』大竹伸朗

www.ehonnavi.net

 まずは、コレ↑。

「オススメの絵本は?」と、

ある絵本作家さんをインタビューしたときに質問してみた。
そしたら『ジャリおじさん』って答えてくれてそれで初めて知った絵本。

sphinxis.com

 

コレはほんとに素敵な絵本で、

なんというか、完璧だった。

「何もない絵本」と絵本作家さんは評価していたけど、ほんとにその通りで。

もちろん、主人公のジャリおじさんがふと黄色い道を見つけてその道を歩き始めてその途中でいろんなヒトやモノに出会っていくっていうストーリーはあるし、絵もちゃんとストーリーにそって描かれているんだけど、それでも、「何もない」っていう感想がしっくり来る。

 

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ジャリおじさん|絵本ナビ : おおたけ しんろう みんなの声・通販

 

“絵本を読む”という行為ができるだけの必要最低限の情報はあるんだけど、つまりストーリーもイラストもあるんだけど、逆に言うと、それだけしかないという不思議な感覚。それ以上でも以下でもない、絶妙なさじ加減の絵本。

『ジャリおじさん』は、心地いいぐらいにメッセージがない絵本なんだ。

泣くも笑うも、読み手に委ねられた自由。どこまでも優しくその時々の感情に寄り添ってくれる絵本。それでいて、著者のおおたけしんろうさんの絵は、「なんじゃこりゃ?」とツッコミながらも笑ってしまうような遊び心がある。

大切なときに抱きしめることができる絵本っていうと、詩的というか、ポエムすぎるけど、メッセージは時に凶器となりえるから、どんなときでもじっくりとゆっくりと読み返せるというのはとても大事だと思う。

絵本というモノが、大人になってもふとした瞬間に立ち戻れるモノであるというならば、『ジャリおじさん』はその一冊として、宝物として、何度でも読み返してみたくなる、そんな絵本です。

 

余談だけど、著者がおおたけしんろう(=大竹伸朗)で、現代アートのむちゃくそど真ん中で活躍している人っていうのもまたおもしろいもんで。

大竹伸朗 | Take Ninagawa

 

 

『現代ゲーム全史』中川大地

現代ゲーム全史  文明の遊戯史観から

現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から

 

 

次は、コレ↑。

まさに力作。大作。鈍器。

表紙だけを最初に見て「これは買わなきゃあかんやつだ」と思って、書店に行ったら以下の分厚さで「うひょー」って変な汗と脳内物質出たよね。

 

 

しかも、装幀は水戸部功さん。さすがの仕事。

装幀家:水戸部功 | ヒーロー見参!!

 

この本を今年よかった本に選んだ理由はもう冗談抜きで、まさにこの“分厚さ”だ。

それはつまり、
第二次世界大戦と科学技術の関係性からスタートして、各時代の代表作をその時代性と共に紹介しつつ(まず冷静に考えてコレだけでも読み応えあって素晴らしい)、しかもなんだか妙に怖いくらい読み易くて、さらにこの縦軸に対して、PCゲームからビデオゲームアーケードゲームという横軸展開が同時進行し、洋ゲー・和ゲーの比較もあるし、『インベーダー』『ゼビウス』『ドラクエ・FF』『ポケモン』『マリオ』『ストリートファイター』『モンハン』といった王道的・歴史的ゲームもあれば、『ひぐらし』とか『東方』とかの同人ゲーとかエロゲとかVRとか『怪盗ロワイヤル』をはじめとしたモバゲーとかとか(僕の青春という名の黒歴史)、おいおいそりゃどこの極地だよって感じのマイナーゲームたちが各所でゲリラ戦を繰り広げ(でもって、その極地でムチャクソな熱量が生まれていたらしいのだ、しかも極地=最前線なわけで、各時代の最前線で起きていた“事件”の熱量や臨場感が文章を通じて伝わってくる不思議。それがまたこの本の魅力でもあるしスゴイところ)、あとは編集者ならば誰もが憧れる雑誌『Whole Earth Catalog』がまさかゲームの歴史本で登場するのかよという歓喜があったりとか(しかもこれが洋ゲーと和ゲーを分かつ根本にあったりしてそこ繋がんのかい!みたいな興奮がやばいです)そういうゲーム以外の文脈も踏まえていて、(小休止)なんかもう結論、感謝しかない。これだけの情報量で2800円+税とか頭おかしいと思うし、これだけ丁寧に上手にゲームという現象をまとめ上げた書籍って過去にも未来にもたぶんないと思う。ゲーム界の聖書だよ、聖書。仏典だしコーランだよ。なんていうか、これだけスゴイ本が生まれた時代に生きていることがまずなによりもスゴイみたいな。まじで震える。冷静になればなるほど震える本。痒いところに手が届くというよりもなんであんたそんなことまで知ってんだ神さまかあんたは神さまなのかっていうかそもそも神さまはこの世に存在しないはずなのでこの情報量をすべて調べたってことなんですよねしかもそれを順序立てて関連付けて文章にしてひとつの本(というかもはやひとつの世界)にしてっていうのがまじでスゴイぞどういう頭の構造なんだコノヤロウ、ひれ伏すぞまじでこれはひれ伏してこうべを垂らしながら弾に当たらんよう頭を低くして生きるレベル(もう自分でも何言ってるかわかりませんが、いい本だってことだけ伝わって下さりやがれお願いします)、

 

遊びというものの本質のひとつは、日常の現実世界とは切り離された空間的・時間的領域やルール・法則の支配する<魔法円(マジックサークル)>を恣意的に作りだし、遊ぶ者たちがそれをひととき共有することにある。by中川大地『現代ゲーム全史』

 

あと、もうひとつ「この本いいなあ、素敵だなあ」と思った理由が、序章の6ページめで登場する上記の文章。これがもうゲーム(遊び)の定義として最高すぎるんですよ。ゲームの魅力(魔力)ってこれに尽きる。

 

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あんたも、螺旋丸、出してみねぇか?

って、「出してみてぇよ…螺旋丸…」って思うじゃないですか。

PS4の「できないことが、できるって、最高だ。」というキャッチコピーと、そのCMはホントに素晴らしいと思う

 

www.youtube.com

僕がゲームにハマったのは結局、64のマリオとかバンカズとかのアクションゲームで、雪山とか砂漠とかなんだかよくわかんない場所とか、現実では行けないような場所(ココジャナイドコカ)を縦横無尽に駆け回って妙ちくりんな敵キャラをボッコボコに倒しながら遊べたことなんだろうと思う。

僕の快感原則として「現実に対して生まれるフィクション」が大好きなんだけど、ゲームもそれなんだよ。螺旋丸も結局、ココジャナイドコカの物語であってさ。

 

<魔法円(マジックサークル)>=フィクション。

それは、現実とは違う場所・ルール・法則で作りだす別世界。

究極的には、アニメや漫画、アートとか芸術やカルチャーっていうのは現実から逃げるように生み出されたフィクションで、ココ(現実)ジャナイドコカであって、それを別の誰かと共有して遊ぶことができるのが、ゲームというフィクションだ。読む・観る・聴くとは違う、遊ぶという要素は、特殊だからこそむちゃくちゃおもしろいよね。

現実世界のルールではヒーローになれないヤツでも、ラノベソードアート・オンライン』みたいな仮想現実ゲームだとしたら、ルールが変わるから活躍できる可能性があるわけで。例えば、自分にとって都合のいい世界を作り上げる狂ったゲームマスターとかそういうキャラってなんだかちょっと魅力的じゃないですか。

 

僕が心惹かれ続けている、フィクション。

人々を魅了する“ゲーム”というフィクション。

その“ゲーム”が積み重ねてきた、ひとつの歴史。その膨大さ。

たった100年だとしても、物質としての分厚さがその密度の濃さを物語る『現代ゲーム全史』。

それをまとめ上げた書籍。

つまり、傑作、と言うほかない最高の一冊です。

 

 

 起こらなかった世界についての物語ーアンビルト・ドローイング

起こらなかった世界についての物語―アンビルト・ドローイング

起こらなかった世界についての物語―アンビルト・ドローイング

 

 

 “アンビルト”という言葉はご存知だろうか?

例えば、2015年に話題となった新国立競技場のニュースで聞き覚えのある人もいるかもしれません。破綻となった最初の建築案を設計したのが「アンビルトの女王」の異名を持つザハ・ハディドという建築家でした。

 

www.gizmodo.jp

つまり、“アンビルト”は、建たなかった建築のことです。

建築という創造物は、どうしたって実現までに数年・数十年かかってしまうので、その途中で紆余曲折が起こって(景気後退で予算なくなっちゃったりとか周囲から異常な抗議を受けちゃったりとか)、建築計画自体が頓挫することがあるらしい。

話によると、建築コンペで1位を取って採用された案よりも、次点の2位の方が建築としてのアイデアがぶっ飛んでてスゴイ建築である場合があるようで。スゴすぎて実現できなかったりとか理解されなかったりとかとか。スゴすぎて、ぶっ飛んだアイデアすぎて建たないとかそういうのってなんかカッコいいですよね。

 

『起こらなかった世界についての物語』は、そういった建たなかった建築をそのドローイングと、著者で建築家の三浦丈典さんのエッセイで紹介する本です。

 

って言いたいんだけど、でも、ちょっと違った。

違いました。最初にこの本を見つけたとき、アンビルト建築についての本かな?と思って手に取ったんだけど、この本は、僕が(勝手に)想像した『建たなかった建築についての物語』じゃなかった。

そうじゃなくて、あくまでも、『起こらなかった世界についての物語』だった。

 

建築になんだか心惹かれ始めているのは、

きっと、それが建築家にとってのユートピアだからだ。

建築について考えるとき、その周辺環境や人々のライフスタイルを切り離すことは不可能で、だからこそ建築家は都市論を語ることができる。こうしてほしいというオーダーがあったとしても、建築家ひとりひとりに「建築とはこうあるべきなんじゃないか?(=人々の生活は、世界は、こうあるべきじゃないのか?)」という仮説があるはずで、諸々の条件(顧客のオーダー、周辺環境、物理法則、技術的問題、予算)と建築家のユートピア論が上手く(あるいは、努力によって)重なったとき、唯一無二の素晴らしい建築が生まれるのではないかと思う。

 

ユートピア

『現代ゲーム全史』でも語りに語った、ココジャナイドコカ。

数学や物理などの物質世界の構造を熟知し、人々のライフスタイルや居心地良さを追求し続けている、ある意味で、現実と理想という2つの知見を扱う知の巨人たる建築家。その彼らが望む「こうあるべきじゃないか」という世界。

そんな理想郷の片鱗が、ドローイングというかたちで現れる。まるで落書きのようでもあり、心の奥底に眠る童心が、彼らがずっとずっと大事にしてきた願いが、絵筆を通して無邪気に広がっているかのよう。 

 

www.youtube.com

ポール・ルドルフ、スーパー・スタジオ、ルドルフ・シュタイナー、ハンス・ペルツィヒ、アルド・ロッシ、アタナシウス・キルヒャー、ピーター・クック、エットーレ・ソットサスアルネ・ヤコブセンなどなど。

総勢26名の建築家によるユートピアが並ぶ。

 

 

建築に興味はあれど、知識はなく。

実際、読む前はほとんど知らない建築家ばかりだったのだけど、そんな僕でも大切な一冊になりえた理由は、なによりも著者の三浦丈典さんの文章力。

 

三浦さんの文章がほんとにスゴい。やばい。

 

なんというか、すごく正直に言うと、

こういう文章を書きたい、書けるようになりたいと思えるほど、悔しいほど、どうすりゃいいのかわかんなくてむかつくほど、ホントにいい文章なんです。

 

それぞれの建築家が大切にしていた理想郷を、豊富な知識量をすべての土台にして、三浦さんの経験を織り交ぜながら、ひとつの喜劇や悲劇として物語に再構成している。

ただ単純に「こういう建築家がいて、こういうドローイングを書いて、こういう時代背景があって」ってつらつらと書くだけじゃなじみにくいと思うんだ。三浦さんはまず自分の話から入る。自分の言葉で語る。スーパースタジオの文章なんか最高で、「スーパースタジオのドローイングを見ると、こどものころ観ていたアニメのエンディング曲を思い出す」だよ、出だしが。そのあとに、スーパースタジオという建築グループやその時代背景(1966年のフィレンツェ大洪水とか)を説明し、彼らが思い描く理想世界と対極にあるポストモダン文化が世界を席巻すると語り、その受け入れがたい事実とアニメのエンディング曲が持っている危うさと不条理の感覚が繋がったところで、物語が終わる。

 

知識と感性が、絶妙に混ざり合い、その物語に共感し心惹かれつつ、それを支える知の世界がまだまだどこまでも広がっていることも実感できてすごくワクワクする。

言葉ひとつひとつのチョイスも上手くて、ドローイングから感じ取った感情を言葉巧みに表現していて、しかも、すべての言葉が物語のクライマックスを演出するかのような、無駄のなさ。

 

ホントに素敵な本だよ。

実現しているモノ・存在しているモノも好きだけど、どうしても、イマココに存在していないモノにも、強く惹かれてしまう。

どれもこれも実現しなかった世界だけど、それでも、そこにある力強さとか切実さみたいなモノに、心をグッと掴まれてそれは痛いし切ないし泣きたくもなるけど、でもどこか心地良さがあって。

 

ホントに素敵で、大切な本で、もっともっと、その文章を読みたい。

ので、ぜひとも『起こらなかった世界についての物語2』とか『3』とかにも期待したい。あわよくば、僕がそういう文章を書けるように努力します。

 

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 ↑【定期】

 

 

以上、 今年よかった本ベスト3でした。

アート、漫画、アニメ、映画、小説、陶芸、ファッション【2015年】から、さらに、絵本、ゲーム、建築にまで興味と知識の幅が広がってよかった年だった。その他、バイオと数学、仏像、アイドルにも触手を伸ばし中【2016年】。フィクション=ヒーローとして、この領域、快感原則では誰にも負けたくない。

 

とりあえず、各紹介記事を20行くらいでサラーと書くつもりが、途中でノリノリになって長くなっちゃうのやめたい。