辞書を編む人たち

4月26日放送のETV特集「辞書を編む人たち」が素敵すぎた。

言葉を愛するってこういうことを言うのだな、とテレビの前で思わず姿勢を正す。ひとつひとつの言葉の意味にこだわるからこそ、わかりやすく簡潔な言い回しをどうにか捻り出そうと七転八倒する様子は、筆舌しがたい心の感動を、まるで虚無を掴むかのようだけれども、それでも丁寧に言葉にしようとする感じに近いのだろうなあ、と妙な共感も。

NHK【ETV特集】辞書を編む人たち 2014年4月26日(土)夜11時、再放送:2014年5月3日(土)午前0時00分(金曜深夜)

消えゆくモノたちをどう受け止めるか?ということは、辞書に限らず、21世紀のひとつのテーマになるのかも。ひとつ、救いだったのは、新しく日々生まれる言葉を集めて、しっかりと語釈を添える作業は、インターネットがどんなに普及しても、その行為だけはなくならないこと。人間が生きていて、言葉を話す限り。だけど、ずっと言葉を編んできた人たちやそこに美しさを感じる学生にとっては、言葉だけじゃなく“辞書“にも愛着があるんだろうなあ、と思うとちょっと悲しい。本という物質が持つ、独特なノスタルジーは一体なんなんでしょうね。まったく本が憎い。「本が消える」ということが、ひとつの物語になるほどに、そこには奇妙だけど魅力的な魔力が潜んでいる。

辞書が好きです!っていう、学生インターンの人もすごく素敵でした。あの感じ。何かに囚われて、もう逃れられないんだけど、好きで好きで、どうしようもない、あの感じ。ほんと素敵。同時に、先輩社員たちからも、職人のようなオーラすら感じられて、かっこいいなーとしみじみ。辞書編集長のお方が、会社のお偉いさんと対峙する場面なんてもう圧倒的な敵キャラを前にしても何かを貫こうと必死に立ち向かうヒーロー像そのもの。音楽もよかったけど、なによりも、『脱皮』という言葉の意味を演出として挟んできた番組の編集陣の力量もかっこよすぎた。番組構成としても神回でしょ。

 

感情と違って、言葉は残る。

って思ってたけど、消えていく言葉もあるんだ、と改めて思った。切なくて、儚くて、美しいね。

 

そういえば、映画「舟を編む」を観たくなった。←単純