フィッシュ・オア・チップス論

副題:フィッシュ・アンド・チップスはどうして不味いのか?

ロンドン旅行をしたときに、なんとなく気になったので、噂の「フィッシュ・アンド・チップス」を食べに行ってみました。そう、あの「不味い」と噂の「フィッシュ・アンド・チップス」である。「不味い」「不味い」という不名誉な噂を授かったのはきっと昔の頃の「フィッシュ・アンド・チップス」であり、その噂を断ち切るがために今頃の「フィッシュ・アンド・チップス」はきっと美味くなっているだろう、というのが僕の予想。あるいは、「フィッシュ・アンド・チップス」が「不味い」と言われるのは味が薄いからであり、そもそもなぜ味が薄いか?というと、人それぞれの好みにあわせて味を調整できるようにしてあるという便利設計だから、という意見もあって、これがきっと真実であろう、と僕は予想していた。人様の良心につけ込んで、あれやこれやと罵詈雑言をぶつけて喜ぶクソッタレな人間がきっと世の中にはたくさんいるのだ。

さて、ロンドン旅行の3日目。事前に調べていた「美味しい」と噂の「フィッシュ・アンド・チップス」屋さんが近くにあったので、「そろそろ飯でも食うべ」と寄ってみた。ちなみに、わざわざ地雷を踏む勇気はなく、「美味しい」と評価されている「フィッシュ・アンド・チップス」屋さんを選んだことは許してほしい。ちなみに、ここ。「SEAFRESH FISH RESTAURANT(フィッシュアンドチップス - Seafresh Fish Restaurantの口コミ 【トリップアドバイザー】

今調べてみたらご丁寧に動画まであったw


ロンドンの美味しいフィッシュ&チップスの店『Seafresh Restaurant』 - YouTube


僕が頼んだのはもちろん「フィッシュ・アンド・チップス」で、魚の種類は「Cod」、つまり「たら」でした。それと、同時期にオランダあたりに旅行していた知り合いがFBで昼間っからビール飲んでるぜ写真をアップしていたのに触発されて「僕もリア充になるんや」とブリティッシュビアー(?名称不明。なんかイギリスっぽいビール)を頼み、何を血迷ったのか(というか、「フィッシュ・アンド・チップス」だけを頼むという行為が恥ずかしくて)「Baked potato」を注文。
そして、待つこと数分。最初になんちゃらビール(?名称不明。以下同文)が来てすぐに「フィッシュ・アンド・チップス」が登場!…ん、でかい!(思ったより)というのがファーストインプレッション。フィッシュが想像以上にでかいのである。これは「Baked potato」いらなくないか?とか思いつつ、「フィッシュ・アンド・チップス」と一緒に出されたケチャップソースとタルタルソースをかけるよりもまずはそのまま食うべし!と、何もかけずにフィッシュをパクリ。

………「不味い」とは言いません。
けど、味がまじで薄い。てか、味がない。
まったくない。「魚本来の味わいが」とかもない。
で、まあそれはそれで仕方ないので、ケチャップをかけるなりして黙々と「フィッシュ・アンド・チップス」を食べるんだけど、そこでひとつの確信が生まれてくるわけです。きっと誰でもその確信が生まれてくると思うんだけど、「あれ?ケチャップ美味いな」って。そうなんです。「フィッシュ・アンド・チップス」を食べていると「ケチャップが美味い」ということに気付きます。「ケチャップすげー」「ケチャップ神だな」と。そこで、味のない「フィッシュ・アンド・チップス」をせっせと処理しているときにふと思ったんだけどね、「不味い」イギリス料理に対してフランス料理やイタリア料理は「美味い」と言われているけど、その差はなんだろう?とか思うわけです。フランス料理やイタリア料理はきっとちゃんと味付けをされているんだろうなあ、ということは結論としてなんとなくわかる。味付け=ケチャップなどの調味料であり、フランス料理やイタリア料理が「美味い」とされるのは結局、ケチャップを始めとした調味料のおかげなわけです。つまり、「ケチャップ(調味料)が美味いんだ」と。であるならば、美味しい料理が食べたいなら「ケチャップを食べればいい」わけで、そういう意味でケチャップを食べるために「フィッシュ・アンド・チップス」を頼むイギリス人はものすごく本質的で、合理的なのではないか。「フィッシュ・アンド・チップス」なのではなく、「ケチャップをお持ちしました。お好みでフィッシュかチップスをつけてお召し上がりください(フィッシュ・オア・チップス)」が正しい。調味料本質論とも言うべきもので、イギリス人は人類の最先端をいっているに違いない。時代が追いついていないのだ。「フィッシュ・アンド・チップス不味いワロタwwww」ということは将来において時代遅れになるかもしれない。

以上が、「フィッシュ・オア・チップス論」である。

貧乏国だったイギリスが、世界に打って出た大航海時代。そのとき、世界中にある美味しいモノの存在、とりわけそれはインドの香辛料に気づいたのかもしれない。イギリス人のケチャップ(=調味料)崇拝主義は、この「香辛料美味くね?」という当時の衝撃に起源がある気がする。大英博物館を見るにつけ、世界中の素晴らしい文化を「奪い纏う」ことで、自国の文化は成長することをやめてしまったのではないか?イギリスの貴族たちは、自国の画家たちに肖像画の作成依頼をするだけで、印象派などの当時最先端だった絵画についてはフランスなどの外国から輸入していたと言われ、その結果としてイギリスの芸術は肖像画ばかりに溢れ、新しいムーブメントは生まれず、「芸術後進国」と揶揄されるに至ったらしい。同様に、おそらく当時の貴族たちは海外からの食文化に憧れて、そういったモノを大英博物館的に集めては食していた。一方で、労働者階級は「食うこともままならない」時代が続く。「フィッシュ・アンド・チップス」は、当時流行した加熱して殺菌するという衛生学に則った「加熱して食う。お腹を壊さなければなんでもよい」という思考回路から続く伝統のようなものであるとも言われる。ケチャップ崇拝主義は、まあ冗談というか(けっこう本気だが)誇張表現ではあるけれど、大航海時代における香辛料(海外の食文化)の衝撃は、大きかったに違いない。

ちなみに、散々「フィッシュ・アンド・チップス」をこきおろしてますが、「SEAFRESH FISH RESTAURANT」での食事が一種のトラウマのようになっているのは、ひとえに「Baked potato」が9割がたの原因になっていると(確信的に)思っています。「Baked potato」とは、日本でいう「じゃがバター」であり、あれって日本で食べてもけっこう最後の方は「うっぷ…」ってなるじゃないですか。その威力が半端無く、そして味気のないフィッシュ・アンド・チップスがそこに加勢してきて、ふたりで寄ってたかってフルボッコにしてくるという2重の暴力に晒されたわけです。だからまあ、「フィッシュ・アンド・チップス」だけを食べていればふつうに美味いんじゃないですか(丸投げ)四苦八苦しながら「Baked potato」を食べているときは「さすがシャーロック・ホームズの国だぜえ…」とかなんだかよくわからない悲鳴をあげてました。ええ。