プライベートユートピア展

イギリスがなんとなく好きだ。「あ、これ好きだな」と感じたモノがイギリス生まれであることが多い。映画「トレイン・スポッティング」やSF小説「1984」、芸術家であればフランシス・ベーコンダミアン・ハースト、あるいは作家オスカー・ワイルド。以前のエントリにも少し書いたけど、日本庭園に興味があるのでイギリス式庭園にも興味がある。尊敬する伊藤計劃も、イギリスが好き(少なくとも興味の範囲内)だったようで、イギリスが小説の引用として登場している(From The Nothing,With Loveや「屍者の帝国」など)。もっと言えば、「ユートピア」のトマス・モアも、「素晴らしい新世界」のオルダス・ハクスリーもイギリス人。「ユートピア」、なんて素敵な響きなんでしょうかね。そんな小説を書いちゃうイギリス人の性格にいいねを押したい。調べてみたら歴史的にイギリスは風刺社会であるようで、上記ディストピア小説作家2名を始め、ジョージ・オーウェルや「ガリヴァー旅行記」のジョナサン・スウィフトなど有名ドコロがわんさか。風刺だなんてひねくれた国民性は、まるでかわいげのない僕みたいで親近感も湧く。調べてたらこんな記事があった。自虐ユーモアならイギリスに任せろ | コリン・ジョイス | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

ちなみに上記内容については注釈が多々必要で、「トレイン・スポッティング」もフランシス・ベーコンオスカー・ワイルドも、アイルランドが舞台だったり出身だったりと正確にはイギリスじゃないけど。まあ、あの辺界隈(超ざっくり)が好きだということで。いや、もっと正確には好きなモノの共通項を考えていたらイギリスに集中していた、という話。華やかなパリのイメージよりは、どんよりとしたロンドンのイメージの方が自分にも合っている気がする。所詮、日陰者ですよ。

さて、前置きが長くなった。
イギリス大好き!ということで、プライベートユートピア展に行ってきました。

東京ステーションギャラリー - TOKYO STATION GALLERY -

 

最近、ラファエル前派やターナーなどが日本でも展示会をやっていますが、こちらの展示会はイギリスの現代アーティストたちで構成されている。現代アートは社会模様や人間模様を描くことが多いので、イギリス人の現代アーティストたちの思考回路や、彼らが感じ取っている「現代イギリスの雰囲気」のようなモノを知れたらいいなあ、と。すべてがそうであるとは言えないですが、やっぱり皮肉っぽい現代アート作品が多い印象でした。地図に隕石を落とす「コーネリア・パーカー」、鳥のきぐるみで社会を皮肉る「マーカス・コーツ」、物語の中に卑猥なモチーフを組み込む「グレイソン・ペリー」等々。個人的にグループ展は苦手だということを再認識した日でもあった。ぶっちゃけると、ものすごく疲れる。最初の「コーネリア・パーカー」の作品からは様々な物語が想像できたのだけど、だんだんと疲れてきて、最後の方は直感で「いい!」と思った作品だけをチェックするという体たらくですいません。でもまあ、そんなヘタレっぷりでも、数名ほど気に入ったアーティストさんがいました。

まず、サラ・ルーカス。プライベートユートピアでは、彼女のポートレイトが中心だったのだけど、それでもなんだか滲み出る頽廃さというか、一見理解不能なんだけどそれでもふんわりと香る不気味さがすごく好きで病み付き。改めて調べてみたけど、ほかの作品もいい感じ。どことなくフランシス・ベーコンっぽい。

Sarah Lucas|サラ・ルーカス 作品画像 - NAVER まとめ



次は、デイヴィッド・シュリグリー。プライベートユートピアの広報画像としても使用されているこちらの作品とかもうめちゃくちゃ中二病っぽいんだけどやっぱり好きなんだよね。

http://stat.ameba.jp/user_images/20140126/23/britain-park/6c/11/j/o0590078712826280132.jpg

2014年01月26日のブログ|Britain Park

シンプルでいいと思う。ほかの絵作品もなかなか。こういった絵独特の、潰されたり殺されたりしてもユーモアを含んだ悲鳴をあげるところが想像できるというか、すごく雑で残酷なんだけどその絵柄ゆえになんだかお茶目で、その一方で実は作品の根本はすごく本質を掴んでいたりとかして、いわゆる海外っぽいウィットな感じがすごく好き。

David Shrigley|デヴィッド・シュリグリー 作品画像 - NAVER まとめ

あと、動画がちょっとシュールでナイス。

ほかの国との比較ができないので正確なことは言えないけど、やっぱりどこか残酷さが滲み出ている作品が多くて、それがイギリスという国のひとつの側面なのかと思うと、一体その残酷さの起源はどこからなのか?と気になってくる。ちなみに軽くフランスの現代アートについて調べてみたところ、やっぱりフランスはお行儀いいね(笑)21世紀のフランス現代アートシーンとは? 「フレンチ・ウィンドウ展」キュレータートーク: 森美術館公式ブログ ミニマル系とか物質系とかが多い。さて、日本はどういう感じなのかな。いわゆるアニメ絵をモチーフにした「カワイイ」とか「女の子」が多いという印象。そういえば、プライベートユートピアのステイトメントで、「イギリスは”物語”の国である」と言っていて、「なるほど」と納得感。そのステイトメントにもあったように、シェイクスピアからハリー・ポッターまでを生み出したイギリスの物語力はすごい。他にも、上記のような風刺小説は当然ながら、シャーロック・ホームズアガサ・クリスティなどの推理小説もあって、イギリス文学の幅広さと深さには驚くばかりである。