グスタフ・クリムト

ミュッシャのように独特で装飾豊かな画風と(クリムトっぽさは唯一無二じゃないかと)、どことなく死を意識させるような暗さがいいなーというのが、グスタフ・クリムトの感想。名前と絵だけは知っていて、たまたまクリムトの映画があると知って借りてみた。

クリムト デラックス版 [DVD]

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クリムトを演じてる役者さんどっかで見たことある、と思ってましたら、以前に観た「マルコヴィッチの穴」のマルコヴィッチさんですね。さて、映画の感想ですが、よくわからん!というのが正直なところ。クリムトの描いた女性の裸体画が、当時、芸術界において(おそらく)絶大な権力を握っていたと思われるアカデミーから拒絶を受けながら、それでも評価されていくというサクセスストーリー…ではないし、映画の中でも数人の女性と関係を持つシーンが多く見られたように女好きの好色男の物語…でもない(と思う。だって、それをあまりにも淡々と描きすぎている)。非現実的な描写を映画として描写している手法は(個人的には映画が映画たる理由でもある気がして好きだが)とても幻想的で、わけがわからないし、鏡や水、映像作品など、それに伴ってクリムトクリムト自身を見つめる描写があったりと意味深な描写も多くてわけがわからなかった。「醜いものは美しい」とか「偽物と本物とは?」のような問いかけもあり、謎が深まるばかり。しっかりとクリムトのことを学んでいたらこのあたりの結論は(彼が)出しているのだろうか?

ほかの人たちのレビューにもあるように、クリムトが生きた20世紀のパリやウィーンの雰囲気を感じられる映像・シーンがあったことは収穫だった。いわゆるサロンといわれる場所で西洋美術の表現や西洋哲学の議論がなされていたと言われているが、そのサロンのシーンで芸術家たちや哲学者たちが「美」について議論しているのは新鮮でかっこよさもあった。芸術の役割として、ひとつの前提を疑うことがあるとすれば、サロンのような場でその前提を議論して、そこからまた新しい芸術が生まれるかもしれない。そして、その逆もしかり。芸術は議論を喚起するもの。「無知の知」で有名なソクラテスは、対話(議論)をすることで若者に、その若者が何も知らないことを痛感させていた。それは近藤さんとの会話と似ている。前提を疑うこと、自分の頭で物事を考えること、それが議論によって成せるなら、そういった場を作ってみたいかも。