美術館はしごのレビューをてきとーに

まずは原美術館で開催されていた「坂田栄一郎」展。

f:id:Jian92fs:20131002234237j:plain

行こうと思ってたらもう会期終了直前だった、は美術館あるあるですが、fbで知り合いの方がこちらの美術館をオススメしてたので(行くつもりなかったけど)急遽最終日に行ってきました。そもそも原美術館に来るのも始めてだったのでちょうどいい機会ではありましたが。

さて、ざっくり言えば、江ノ島の海で撮った写真をひたすら展示している、という展示会なわけですが。グルスキー的な写真のおもしろさとか構図という名のテクニックで魅せる写真の妙なんかを感じることができる展示でした。

以下、鑑賞中にメモった感想をそのまんま。

・汚さに嫌悪感

それは物をぐちゃぐちゃに置いている写真であり、砂が物にかかっている写真でもある。

坂田さんが選ぶ被写体に興味

坂田さんは江ノ島の写真によって若者の内面や時代の流れを伝えることになったと言っていたが、その一方で、どうしてこの構図で撮ったのか?という坂田さん自身の感性にも興味を持った。

・抽象主義的写真

青いぐちゃぐちゃビニールシートに置いてある缶ビールの写真を典型として、ビニールシートとそこにある物、そして砂との関係性が抽象主義のようにも見えた。特にメガネを外すと。そしてその色彩の選択にも好意を。あるいは、写真やチラシの切り貼りの現代美術のような(アメリカン・ポップアートのような)手法にも見える。

 

あと、この日はそういう気分だったので美術館はしご。

f:id:Jian92fs:20131002234255j:plain

同じく会期終了日だった上野の福田美蘭展におじゃま。感想としては、知識と技術力があってこそ始めて成せる技だなあ、と。福田さんの作品をざっくり言うと、皮肉。ブッシュ大統領イエス・キリストが会話している背景に911のワンシーンを描いていたり、昔ながらの日本絵画のあちこちに企業のロゴマークを散りばめていたりとか、既存のモノに対してメッセージ性のある皮肉な細工をしている。「自分の頭で考える機会を与えるのが芸術である」なんて思っているわけだけど、そのためには知識が必要なんだと痛感させられた展示会でした。彼の作品は芸術自体に対する皮肉な作品もあって、例えばベラスケスの有名なラス・メニーナス(女官たち)という作品を使った作品もあって、これは理解できたけど、よく知らない作品はどうしてもわからなくて解説見て「なるほど」と。何かを楽しむためにはそれ相応の知識がないと楽しめなくて、芸術においてはそれがより顕著だなあ、という気がする。

人が感動するポイントは人それぞれ違うわけで。それはそれぞれが経験してきた過去の出来事によって変わってくると思うんだけど、でもなるべく多くの人を感動させたい!と思ったら、なるべく多くの人にとっての共通項を提示して、それを上手く人々の心に響くように作品に変換しないといけない。それは皆が共通に持っている(と思われる)常識だったりとか、皆が無意識に感じている時代の空気だったりとか。半澤直樹とか進撃の巨人はこのあたりの空気感を的確に捉えてたんじゃないかと。まあ、話を戻すと、作者が常識と思っているポイント(あるいは知識)はちゃんと抑えておかないと理解できないし、一方でそうやって感動させるターゲットを絞ることもできたりするのかもしれない。

例えば、キリスト教が強いところって、20億人の人々が同じキリスト教のストーリーを共有しているところにあると思う。お笑い芸人がお笑いライブでまず最初にやることは、会場の空気を自分たちの有利なモノに変えること、らしい。いわゆる掴みというやつで、同じギャグでも、「こいつはおもしろいやつだ」と思っている人(例えば、松本人志)が言うのと、「こいつ何者だ?」という初対面の人が言うのとでは笑いのハードルが大きく違う。キリスト教を上手くネタにしたギャグを言えば、20億人が笑うという土台がもうすでに出来上がっているわけ。

話が大きく脱線したけど、常識とされている知識は知っとかないと楽しめないよな、という話。