福島北茨城弾丸ツアー

行ってきました若冲展!

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最近、話題沸騰中の伊藤若冲。この展示会を開催したジョー・プライスという男がまた最高にかっこいい男なんですよ。周囲がまったく若冲に対して興味を持たない中で自分の感性だけで若冲をコレクションし始め&し続けたジョー・プライス。後々、「あれ?若冲すごくね?」と周囲がようやく気付くというストーリーのかっこよさ。自分の感性でアートをコレクションして、晩年にそのセンスを認められて映画化までしたハーブ&ドロシー夫妻と同じかっこよさ。あわよくば、そんなかっこいい大人になってみたいとも。自分が「いい!」と思ったモノを「いい!」と言えること。
映画「ハーブ&ドロシー」日本公開版予告編 - YouTube

 

それはさておき。伊藤若冲展。葛蛇玉の「雪中松に兎・梅に鴉図屏風(六曲一双)」を観て、日本人が描く(日本画?)雪ってなんか好きだなーとか思ったり。特にこれは黒と白の対比がものすごく際立ってて雪景色の絵画の中でもほんとにキレイな作品。日本人独特の空白の美がすごく感じられるからでしょうか。無いこと、描かないことが美しいというか。

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伊藤若冲といえば、「樹花鳥獣図屏風」ですが、

もちろんこれもすごくよかったけど(最初観たとき「お風呂屋の壁っぽい」とか思ったけど)、「鶴図屏風」と「花鳥人物図屏風」が最高に良かった。繊細にモノを観て緻密にモノを描き、その上でコミカルに、あるいは簡略化してモノを描く若冲の真骨頂がこの2つに現れてる気がする。若冲はモノを観る目がすごいんだと思う。細かいところまで正確に描くためにはそれが見えないと描けない。そういうすごい目と、そのこれから描こうとするモノがそのモノであると認識されるパーツを観る目もすごい。例えば、リンゴは赤くて丸くて房があればリンゴっぽくなるというような。その2つの目の能力が上手に合わさってるのが「鶴図屏風」と「花鳥人物図屏風」。

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「鶴図屏風」。鶴をしっかりと描いているようで、そいつらの胴体は筆で一筆書きしたような、ものすごく簡単なカタチ。シュッと楕円形を描いているだけ。そこに細い足と顔をちょこっと足すだけで鶴に見えちゃう不思議。どの・どんなパーツが鶴を鶴として見せているのか、ちゃんとわかっているんだなーと思わせる作品。そして、それは軽いタッチで書ける水墨画の真骨頂とも言えるかも。

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「鶴図屏風」より好きなのが「花鳥人物図屏風」。

まず、白と黒の水墨画な感じの余韻がすごくいい。多くを語らぬが、何かを語っているかのような繊細な構図がいい。隣あう(実際は対面する2作)作品同士が実は構図として繋がっていて、ぐるぐると視点が回る感じも素敵。(特に右上の作品)あるいは、墨の特徴でもある荒々しい濃とやわらかい淡。奮い立つ尾と地面にしっかりと降り立つ脚を濃で描き、ふさふさとした胴体は淡で描かれている鶏たちはほんとにかっこいい。向かい合う絵に流れる物語と空気感。蝶々が舞ってる空気感。力強い草花。黒色が単純に力強くて綺麗で。

めっちゃ若冲いいです。最高です。

夜行バスで早朝の福島に到着し、会場の1時間まえに行ったらもうすでに長蛇の列(笑)震災復興の力になれば、という意志で若冲展を開いてくれたジョー・プライスの言葉は、アートとか美術とかの可能性を感じさせてくれるモノで、ちょっとうるっときたし(被災地の方々はもっとグッときたと思う)、多くの方が美術館に(早朝からでも)足を運ぶのは納得の展示会。いいね。

 

とはいえ、さすがに若冲展だけで夜行バス乗って観に行くのも(時間的にも、あるいはお金とかお金とかお金とか金銭的にも)ちょっとなーと思っていたので、弾丸ツアーで北茨城は五浦へも行ってきた。「茶の本」を読んでから「日本美術(日本文化)というか、日本人の感性すげー!」と思い始めたわけですが、その本を書いた岡倉天心様が余生を過ごした(あるいは、本気で引き篭って日本美術を作り上げた)場所である五浦。そして、彼が思索にふけった六角堂。行ってきました。日本美術と日本文化、そして日本人の心を西欧に広めようとした偉人のルーツ。

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静かで、だけど波の音が心地よくて、めっちゃいい場所っすわー。京都行ったときから川のせせらぎとか鹿威しの水の音とかきれいで心地いいなーとか水の音って根本的に人間の耳とか脳にとって心地いいんだろなあーみたいな予感があるんだけど、海から押し寄せるときの波音とか岩にぶつかる激しい波音とか聞いてると、予感が確信に変わりそう。何時間でもその場にいられる心地よさがある。この場所で、岡倉天心は「日本美術とは?」とか「日本美術あるいは日本人の心を西欧に伝えるにはどうすればいいのか?」とひとり波音を聞きながら考えていたんだろうなあ。いい場所です、ほんと。定期的に通いたくなるね。