プロテスタンティズムと内村鑑三が言ったこと

世界を変えた10冊の本

世界を変えた10冊の本

池上さんらしく軽い本なんだけど、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の項目で、資本主義に関してまったく知らなかった事実があって「ほうほう」なんて思いながら読んでた。つまり、あたかも仕事こそが人生の目的であるかのように働くことは、キリスト教のカルヴァン派が大きな原因であるということ。カルヴァン派の信者は、自分が来世で救われるかどうかはもうすでに決まっている(今さら努力しても意味ない)という「予定説」を信じていた。彼らは自分たちが神から選ばれている(=来世で天国に行ける)と信じることが必要最低限の義務として、自己確信の手段として神から与えられた職業(ベルーフ)に従事することを大事にしていた。こうして、神から与えられた職業を「天職」として受け止め、時間を浪費することなく、怠惰な生活をせずに働き続ける。こうして貯まった財産は、無駄に消費せず、資本として再投下すべき、と。これは資本主義そのもの。

アメリカではこの「神の栄光を示す」という宗教的な目的が抜けて、「お金儲けは推奨される」となった。そのアメリカから思考を輸入している日本も必然的に上記のような思考回路を輸入することに。日本人にはカルヴァン派の精神は当然ながら、キリスト教的価値観もないのに。そのせいで、どこかおかしくなったんじゃないか、と思う。

 

内村鑑三は、こう言った。

「日本国の大困難、その最大困難とは何でありますか。私は明白に申します。それは日本人がキリスト教を採用せずして、キリスト教文明を採用したことであります。これが、わが国今日のすべての困難の根本であります。これがわが国のアノマリーすなわち違式があるゆえに、わが国今日の言うべからざる種々雑多の困難が出て来るのであります」

 西欧文明や西欧的な価値観は、キリスト教なくして起こりえなかったのだから、その表層だけを取り込んでもうまくいくはずがない、ということ。